スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

異世界探索

                            異世界探索            第一章 異世界探知機             1    多分、俺は今異世界、と、思われるところにいる。  何故そう思うのかというと、周囲の空間にはひとっこひとり見当たらないからだ。完全なる無人の世界。更に言えば、車もバイクも何も走っていない。そして悪いことに、さっき、化け物らしきものまで目にしちまった ―――何か髪が長くて、顔のない、巨大な女みたいなやつ―――白いワンピースみたいなのを着ててさ。身長は十五メートルくらいあるんだ。俺の見間違いであってくれればいいんだけどさ―――。  あんな化けも物みたいなのに遭遇するなんて聞いてない。だから、俺は嫌だって言ったんだ。今更ながら久美子に腹が立ってきた。久美子がこの案件を引き受けようって言ったとき、俺は何か嫌な予感がするから嫌だって言った ―――いや、言おうとしんだ―――だけどさ。 でも、金に目がくらんだ久美子は、俺が意見する前に勝手に仕事を引き受けちまった。おかげで、今俺はこんなことになっている。  もし、無事にもとの世界に帰れたら、そのときは覚えておけよ、と、俺は心のなかで久美子に対して握り拳を作った。         2    話は前後するようだけど、久美子っていうのは、俺の妹であり、同僚だ。ふたりで便利屋的ことをやっている。ちょっとした家具の組み立てだったり、あるいはおじいさん、おばあさんのスマホの設定の手伝いだったり、行方不明になってしまった猫探しだったり、なん や かんや。  儲かる儲からないで言ったら、そりゃあ、全然儲からない。兄妹ふたり、どうにかこうにか死なない程度に生きていくのが精一杯だ。というか、最近はそれすら怪しくなってきてて、だから、今、俺はこんなことになってる。  ここ二ヶ月ほどは家賃も滞納していて、ケツに火がついている状態だった。だから、妹 ―――久美子は、金に目が眩んだんだ。胡散臭さ満点の仕事を、俺の意見をよく聞きもしないで引き受けちまったんだ―――いや、そりゃあまあ、はっきり意見しなかった俺もちょっとは悪いんだけどさ。  ぶっちゃけ、確かに、報酬は悪くなかった。もし守備よく問題を解決することができれば、報酬はなんと三百万! と来た。もし仮に問題が...

VIMANA2

    こちらはkindleから既に出版している『VIMANA』の一部を掲載したものになります。         第1章 発掘された謎の遺跡              1    宮崎空港の自動ドアを潜って、今、ひとりの若い女の子が外に出て来た。背中のあたりまで伸ばされた髪の毛は明る過ぎない茶色に染められている。少し細い、綺麗な二重の瞳は、いくらか気が強そうな印象を見るひとに与えるものの、そこには明るく、活発そうな光が宿っている。  顔立ちもまずまず整っている方だ。体型は細身で、余分なものがなにもついていないといった感じがある。身長は百六十五センチで、それは日本人女性の平均身長からすると、やや高い方かもしれない。  装いは長ズボンにポロシャツ一枚といった格好で、オシャレさよりも、動きやすさに重きを置いているといった感じがある。これから旅行にでもいくところなのか、彼女の背中には大きなリュックがあった。  早坂小百合は宮崎空港のロビーから外に出ると、大きく息を吸った。吸い込んだ空気は気のせいか、東京に比べると瑞々しく、澄み渡っている気がする。そして、微かに、海の匂いがした。真夏の太陽の光が、眩しく小百合の目を打つ。小百合は立ち止まると、周囲の景色を見回してみた。空港の駐車場を取り囲むようにして、ヤシの木を彷彿とさせる、背の高い木々が植えられている。まるでハワイに来たみたいだ。小百合は思った。もっとも、まだ小百合は一度もハワイを訪れたことはないのだが。 「気持ちの良い天気ですね」  小百合のあとに続いて、ロビーから出てきた藤島さやかが明るい声で言った。    藤島さやかは小百合が通っている大学のひとつ後輩だ。彼女は目が大きく、表情が楽しそうによく動く。髪の毛の長さはショートボブで、それを明るすぎない茶色に染めていた。体型はすらりとした細身の体型で、背の高さは百五十五センチとやや小柄だった。彼女も動きやすいさを重視した、長ズボンにティシャツ一枚といった格好をしている。さやかの背中にも重そうなリュックがひとつあった。 「ほんとだね」  と、小百合はさやかの方を振り返ると、微笑んで相槌を打った。そして改めて、よくこんな今時の女の子といった感じのする娘が、自分の所属しているオカルト研究会に入ってくれた ものだな 、と、小百合は感心するというよりも不思議に...

VIMANA1

 こちらは既にkindleから出版している小説『VIAMNA』の冒頭部分になります。           プロローグ      宮崎県日南市は、日本列島を構成する、南西部の島の、その右真下からやや上に上った隅に位置する。太平洋側に面した、人口五万人程の小さな町だ。  そしてそれは、宮崎県日南市近くの上空に突如として姿を現した。形は正三角形をしており、色は深い黒色だった。機体に窓のような構造物はなく、滑らかで、光沢のない、頑丈そうな金属で全て覆われている。大きさはちょうど戦車二台を横に並べて置いたくらいのものである。機体の底部は、動力源なのか、青白い光を放っていた。  その奇妙な、正三角形をした黒い飛行物体は、日南市の海岸線付近の上空を非常にゆっくりとした速度で飛行していた。飛行しているというよりも、むしろ浮遊しているといった感じに近い。  そしてその飛行物体のなかでは、これもまた黒色の、金属質な、身体の線がくっきりと浮きでるような衣服を身に纏った女性が、コクピットらしき場所に腰掛けていた。女性の顔は宇宙服のバイザーを思わせる、透明な覆いに覆われていた。そしてそのバイザーのなかにある、女性の顔は美しく整っていた。ギリシャ彫刻の彫像を思わせる、彫りの深い顔立ちだ。綺麗な弓形を描いた眉と、くっきりとした二重の瞳。そして通った鼻筋と、その下に広がる、いくらか厚みのある、濡れたような薔薇色の唇。肌の色は茶褐色で、髪の毛の色は黒だった。髪の毛の長さは背中のあたりまである。手足はすらりと長く、均整の取れた身体つきをしている。年の頃は二十四、五歳といったところだろうか。彼女は気を失っているのか、瞳を閉じてぐったりとして動かなかった。 「 …… ううっ」  エシュナ・バルシアスはうめき声と共に、つかの間の失神状態から意識を取り戻した。それから、ゆっくりと閉じていた瞳を開く。  ここはどこだ?   エシュナはコックピットの外へ目を向けた。機体に窓はないのだが、機体の外の景色を内部の壁面に投影する装置があるので、問題なく外の様子を確認することはできた。  エシュナが眼下に目を下ろすと、海が見えた。どうやら自分はどこかの海上を飛んでいるらしい。更に前方に目を向けると、陸地らしきものが見えた。まず海岸線があり、その海岸線に沿って黒いものが走っている。恐ら...